「UTMⅢ」は小型・軽量かつ非直線性0.03%FS、最高回転数25,000rpm、
許容過負荷500%を実現した回転トルクメータです。
モータ試験機や官能検査の自動化など、幅広い用途でご利用いただいております。
「ワークを締結していないのに、軸を回転させるとトルク値がずれる」
トルク計測中にこんなご経験ありませんか?
トルクメータは、回転時にベアリングの摺動抵抗と遠心力の影響により、出力が変化してしまいます。
今回は、UTMを無負荷で回しベアリングと遠心力の影響を見てみました。
下記はUTMⅡ-2Nm(先に発売)と UTMⅢ-2Nm(後に発売)を5台ずつ用意し、負荷を締結せずに回転させたときの出力の変化です。
グラフの横軸は回転速度を表し、縦軸はフルスケールに対する無負荷時の出力変化を表しています。UTMⅡも UTMⅢも軸をベアリングで支えているので、ベアリングの回転に伴う摩擦が発生します。回転方向が逆になると、トルクの符号も反転します。
よく見ると、UTMⅢでは正転と逆転の特性は横軸に対してほぼ対称になっていますが、UTMⅡでは非対称になっています。この非対称の成分は回転方向に関わらず発生する成分で、遠心力によるものと思われます。遠心力の影響は芯ずれや軸の重心位置のわずかなずれで発生しますが 、UTMⅢでは卓越した生産技術によってこれらの影響が最小になっています。ベアリングレス仕様ではベアリングの摩擦の影響は生じず、また、遠心力の影響も僅少です。高速回転時のトルクを正確に測定することができます。
UTMⅢは、軸にかかるラジアル荷重やスラスト荷重がトルクの実効精度に与える影響を規格化しています。
カタログに記載している許容軸端荷重のラジアル方向、スラスト方向の値は、それらの荷重がかかった時にトルク出力への影響が0.03%以下であることを保証する値です。
トルク計を使用するには、軸と軸とを連結する必要があります。しかし、それを完全に同心かつ平行に設置することは不可能で、必ず多少の誤差が残ります。
この誤差によるラジアル荷重やスラスト荷重を吸収するデバイスがカップリングです。
しかし、カップリングで軸ずれによるラジアル荷重やスラスト荷重を完全に吸収できるわけではなく、トルク計本体にもスラスト荷重、ラジアル荷重が残ってしまいます。
ラジアル荷重、スラスト荷重が精度に与える影響を「UTMⅢ」と「一般的な従来のトルクメータ」で比較しました。
それぞれのトルクメータの片側の軸端を固定し、軸のもう片方の軸端にベアリングを介して7Nのラジアル荷重を負荷しました。
ベアリングを介すのは、力をかけたことによってトルクが発生するのを防ぐためです。
一般的な従来のトルクメータは最大約0.1%出力が変化するのに対し、UTMⅢは0.01%以下の変化になっています。
許容軸端荷重のばらつきが仕様で抑えられ、今まで以上に高精度なトルク計測を安心して行っていただけます。
UTMシリーズの非直線性やヒステリシス、繰り返し性などトルク計の精度に当たる数値は全てトルク計を静止させた状態での保証値となります。
ただし、回転中のトルクを測定する場合は実際には遠心力やスラスト、ラジアル荷重の影響を受けます。
UTMⅢは非直線性、ヒステリシス、繰り返し性はUTMⅡと同じ精度保証値ですが、遠心力やスラスト、ラジアル荷重が精度に与える影響を抑え、回転中のトルク計測ではUTMⅡよりも精度良く測定できます。