ロードセルという言葉は、エンジニアの方ならともかく一般の方が耳にすることはほとんどないと思います。
ロードセルとは、簡単に言えば力をはかることができるセンサの一つです。
これは「ロードセルなんて聞いたことがない」あるいは「詳しくは知らない」という方にロードセルについて少しだけ知っていただければというおはなしです。
質量と力の関係
2 ロードセルに関する基礎知識
3 ロードセルの原理
金属にはバネの性質を持つ部分がある
ひずみゲージとブリッジ回路
4 多種多様なロードセル
ロードセルのタイプと荷重方向
温度影響について
性能と精度の確認方法
5 重さと力をはかるために
重さをはかる
力をはかる
7 アプリケーション例でご利用のイメージを
はかりに使用される例
力測定に使用される例
8 安全とより良い測定のために
ロードセルの主な故障原因
ロードセルアンプが必須
ロードセルの設置
電気的な外乱にも配慮を
9 用語解説
絵のようにリンゴを手にのせたとき、リンゴの重さを感じることができます。
しかしこの際に感じている重さは、リンゴの質量[kg]だけではありません。
リンゴが地球の重力によって落下しようとする力も同時に感じています。
つまり重さをはかることは力を測定していることになります。
力の単位はニュートンといい、Nで表記します。
力Fと質量m、加速度aは、次のような関係になっています。
地球の重力により生じる加速度を重力加速度といいます。
重力加速度は場所や高度により異なりますが、仮に9.8m/s2とした場合、
102gの物体を手に乗せた際に感じている力は
となりおよそ1Nとなります。
例えば、稚内と鹿児島では1kgの質量を同じ校正のはかりで測定してしまうと約1.2gの差がでてしまいます。
力を測るセンサは他にもありますが、ロードセルは数多く利用されているセンサの一つと言えます。
ロードセルは主に・・・・
金属にはバネの性質を持つ部分がある
下図左のように金属の両端をつかみ、徐々に引っ張るとどうなるでしょうか。
金属片はあるところまでは微小ながら伸びていき最終的には破断してしまいます。
下図右は、金属が伸びていく過程を力と伸びの関係で表した代表的なグラフです。
この降伏点より前を「弾性域(だんせいいき)」、降伏点を超えたところを「塑性域(そせいいき)」といいます。
グラフをよく見ると、弾性域では負荷に応じて伸びが比例関係になっていることがわかります。この部分が荷重センサとして使える領域となります。
ひずみゲージとブリッジ回路
金属がバネのように力に応じてひずむことを説明しました。では、センサとして電気信号にするにはどのような仕組みになっているのでしょうか。
それを実現するのは「ひずみゲージ」と呼ばれる金属箔の抵抗体と「ブリッジ回路」という電気回路です。
金属のひずみ量に比例して抵抗差が生まれると電圧出力(±SIG)が変化するため、力をはかることができます。
例えば、小型圧縮タイプのロードセルでは下記のようなひずみゲージが採用されています。
ロードセルは重さ、力をはかるために実に様々な種類と容量があります。時には専用に設計・製作されることもあります。ロードセルのこの高い適応性が、力センサとして広く利用されている理由の一つなのかもしれません。
一般的に商品化されているものの一部をご紹介いたします。
高応答にも関わらず、非直線性、ヒステリシス、繰返し性の全てにおいて1/10000を実現。試験機や校正用ロードセルとしてご利用いただけます。(»製品ページへ)
ロードセルのタイプと荷重方向
ロードセルはそれぞれに荷重をかける方向が決まっています。ある程度の許容はあるものの、これを逸脱した場合は誤差要因となります。
また、明らかに決められた荷重方向と違う力や容量を超えた力が加わった場合は破損に至るケースもあります。
温度影響について
温度変化の影響を受けるセンサはたくさんありますが、ロードセルもそのひとつです。
高精度な計量・測定が必要かつ周囲温度の変化がある場合には、その影響を考慮する必要があります。
性能と精度の確認方法
ロードセルの性能・精度を知るにはどこを見ればよいのでしょうか?
当社カタログのロードセルの仕様部分を例に簡単にご説明します。
実際のロードセルの選定はこの後にご紹介しますが、アプリケーションに応じて性能を確認するのが一般的です。
前出のとおり、ロードセルを使用する用途は大きく分けて「重さをはかる(はかり用)」と「力をはかる(力測定)」 に分類されます。
ではそれぞれに適したロードセルではどのような違いがあるのでしょうか。
ロードセルを計量目的で使用する場合、いかに精度よく重量をはかるか、ということが求められます。
したがって、ロードセルのスペックは非直線性や繰返し性、場合によってはクリープなどの特性を重要視することが多くなります。
ロードセルを力の測定で使用する場合は動的な荷重の変化に追従できる応答性や過負荷に耐えられる許容過負荷などが重要視されることが多くなります。
応答性はロードセルの固有振動数が早ければ早いほど高くなります。
力の測定ではクリープやヒステリシスなどの項目はあまり重要視されることはありません。
重さをはかる
力をはかる
はかりに使用される例
力測定に使用される例
ロードセルの主な故障原因
圧倒的に多いのは過負荷による「破損」でした。単純に負荷がかかるだけではなく衝撃があったり、ねじられたり、場合によっては共振により思わぬ負荷がかかるということもあります。
したがってご用途に応じて全容量の何%を常時使用するかを予め考慮して希望する精度にかなうか検討することをおすすめいたします。
ロードセルアンプが必須
ロードセルの出力は数mVと微弱な電圧の出力のため、ロードセルアンプが必須となります。ロードセルアンプの役割はこの微弱な信号を増幅することがメインです。
他にもロードセルへの印加電源やノイズ成分を除去するフィルタ機能が備えられているものが一般的です。また、用途に合わせて様々な種類があります。
ロードセルの設置
ロードセルの設置場所は必ず十分な強度を持たせてください。
負荷をかけるべき場所以外に負荷がかからないよう保護をし、ケーブルが引っ張られないよう固定することが望ましいでしょう。
また、粉塵や水滴などがある環境ではロードセル自体の防塵・防水機能を確認し、必要に応じてロードセルの保護を行ってください。
電気的な外乱にも配慮を
ロードセルで取り扱う出力は非常に微弱です。環境によっては電気的な外乱への配慮が必要となる場合があります。
特に工場などで利用する場合は、既に多数の電気を使用していたり、無線などの電波も使用していることがあります。必要以上にケーブルを延長するとそのリスクも大きくなります。
定格出力 | 定格負荷出力から無負荷出力(ゼロバランス)を差し引いた値。 印加電圧1V当たりの出力電圧で表す(mV/V)。 |
定格容量 | 変換器がその仕様を保って測定できる最大負荷。 |
許容過負荷 | 仕様は満足しないが、特性上永久変化を起こさない最大負荷。 定格容量に対する百分率で表す(%R.C.)。 |
起歪体 | 負荷に比例したひずみを発生させる部材。 |
クリープ | 一定条件の下で、定格負荷を一定時間加えたときに現れる出力の変化。 30分間における変化を定格出力に対する百分率で表す(%R.O./30min)。 |
繰返し性 | 同一条件において繰り返し負荷したとき、負荷増加時の同一負荷に対する出力の差の最大値。 定格出力に対する百分率で表す(%R.O.)。 |
ヒステリシス | 定格負荷までの負荷増加時と負荷減少時に生じる同一負荷に対する出力の差の最大値。 定格出力に対する百分率で表す(%R.O.)。 |
非直線性 | 負荷増加時の校正曲線において、無負荷点と定格負荷点とを結ぶ直線に対する最大偏差。 定格出力に対する百分率で表す(%R.O.)。 |
ゼロバランス | 無負荷時の出力。定格出力に対する百分率で表す(%R.O.)。 |
推奨印加電圧 | 変換器の使用上、最も適している印加電圧(V)。 |
絶縁抵抗 | 変換器の電気回路と変換器本体間の直流抵抗。通常はDC50Vで測定する(MΩ)。 |
零点の温度影響 | 周囲温度の変化に起因する無負荷出力(ゼロバランス)の変化。 10℃当たりの変化を定格出力に対する百分率で表す(%R.O./10℃)。 |
出力の温度影響 | 周囲温度の変化に起因する定格出力の変化。 10℃当たりの変化を定格出力に対する百分率で表す(%R.O./10℃)。 |
最大印加電圧 | 変換器の特性を変化させることなく加えられる最大の印加電圧(V)。 |
入力端子間抵抗 | 標準試験温度において、無負荷で出力端子を開いた状態のもとで測定する入力端子間抵抗(Ω)。 |
ひずみゲージ | ひずみの大きさを電気抵抗の変化にする素子。 |