ロードセルは、力の大きさを電気信号に変える変換器です。
高精度ロードセル、劣悪環境で使用するロードセル、シングルポイントロードセルなど、用途に応じ数多くの種類が生産されています。
力の測定には、光、磁歪、弦振動、静電容量、インダクタンスなどをセンサとして使用したものもありますが、本カタログでは、応力に比例してひずむ起歪体とストレンゲージを使用しているロードセルについて説明します。
ロードセルの性能を引き出す多彩な計測器をラインアップ
ロードセルの電気信号(電圧)は、最大でも20 mV程度しかありません。
この小さな電圧をさらに数万分の一にまで分割して計測するため、使用する計測器は安定性が高く、高精度でなければなりません。
しかも、ロードセルが使用される環境は劣悪な場合が多いため、ノイズなどの不要な信号の影響を受けにくくし、必要な信号のみを取り出す技術が必要です。
弊社ではロードセル用高精度アンプ、重量計測用のウェイングインジケータ、圧力・トルク計測用のデジタルインジケータなど、ロードセルの性能を100%引き出す多彩な製品群を取り揃えています。
ロードセルの原理と使用方法 目次
2.ひずみの検出方法
3.ロードセルの内部構造例(ひずみの検出方法の種類)
4.ストレンゲージとは
5.ストレンゲージの働くわけ
6.ロードセルの使用方法
7.ストレンゲージの働く理論
8.ひずみ(ε)と出力(mV/V)の関係
9.ポアソン比
1.ロードセルの原理
図のように、板の一方を固定した片持梁を作ります。他方に力を加えたときにひずみが発生する場所にストレンゲージを貼付けます。その力に比例する変形量 “ひずみ” を測定します。
このホイートストンブリッジからは、印加電圧に比例し、かつひずみに比例した非常に小さい電圧信号が出力されます。この小さな信号を増幅し、数値として表示器で表示します。
このとき、増幅器はロードセルの性能を引き出すのに重要な役目をします。増幅器には1 μVに満たない信号を正確に識別できる性能が求められます。
ロードセルの出力感度の表示はmV/Vで示されます。これは印加電圧当りの定格荷重時の出力電圧です。
仮に、定格容量200 Nのロードセルに1.5 mV/Vが示されていたとすれば、200 Nを負荷し印加電圧を1 Vにしたとき1.5 mVが出力されます。もし印加電圧が10 Vであれば15 mVが出力されます。
2.ひずみの検出方法
ゲージ3, 4はコラムの裏側に貼られています。
ロードボタンに力がかかりコラムが圧縮されると、ゲージ1, 3の電気抵抗は小さくなり、ゲージ2, 4のゲージは圧縮でコラムが太くなることで伸ばされ、電気抵抗が大きくなります。
3.ロードセルの内部構造(ひずみの検出方法の種類)
4.ストレンゲージとは
そのストレンゲージを起歪体に貼付けておくと、起歪体が伸びると導電体も一緒に伸び、抵抗値が変化することになります。
縞の方向が感度方向で、その部分はフィラメントと呼ばれ多くの導電体はニクロムなどが主成分です。絶縁シートはベースと呼ばれ、ポリイミドと呼ばれるシリコーン系の薄い樹脂フィルムなどでできています。ベークライトやエポキシでできているベースもあります。
5.ストレンゲージの働くわけ
したがって、引き伸ばされた割合のおよそ2倍の割合で電気抵抗が変化します。この比率のことをゲージ率またはゲージファクタと呼び、多くのストレンゲージではゲージ率2ないし2.1程度です。
出力電圧は印加電圧が高いほど大きな出力電圧が期待できますが、印加電圧が高すぎるとゲージが焼損したり起歪体に温度膨張などの悪影響を与えてしまいます。
一般にはゲージ抵抗350 Ωでゲージ1枚あたり5 V程度が推奨されています。
また、印加電圧が変化すると出力電圧が変わってしまいますので、印加電圧の安定性は測定に大きな影響を与えます。
6.ロードセルの使用方法
例えば、力較正されたシステムにおいて重力加速度が9.8 m/s2のとき、ある質量を測定し9.8 Nを表示した場合ある質量は1 kgです。
逆に、較正された質量1 kgの分銅があり重力加速度が9.8 m/s2であるとき、インジケータのメモリを9.8に合わせることにより、メモリ1 = 1 Nを簡易的に較正できます。
重力加速度が安定で変化がなければ、質量1 kgをメモリ1に合わせることにより、メモリ1 = 1 kgを簡易的に較正できます。
しかし、重力加速度は場所や高度により異なりますので、質量較正は現地で行う必要があります。
例えば、稚内と鹿児島では1 kgの質量をロードセルの秤で計ると約 1.2 gの差がでてしまいます。
(国土地理院重力加速度 稚内 980642.6 mGal 鹿児島 979471.18 mGal)
7.ストレンゲージの働く理論
変形しないときの電気抵抗は
導電体がδLだけ変形したとすると電気抵抗R1は
一般のストレンゲージでは、Kは2ないし2.1程度を示しこのKをゲージファクタまたはゲージ率と呼んでいます。
参考:金属のポアソン比νは0.33程度ですので、K = 2.1とすれば、kは、0.44であり、比抵抗値がひずみに対し大きな比率で変化しており、無視できないことがわかります。
8.ひずみ(ε)と出力(mV/V)の関係
出力電圧(Vo)は
つまり、K = 2のゲージでは、1000マイクロひずみ(ε・10−6)が発生すると、0.5 mV/Vの出力を得られることになります。
起歪部に4枚のゲージが使用されていれば、4倍のひずみが検出され、4倍の出力が得られます。つまり、起歪体の機械的ひずみが、1000ε・10−6であれば、電気的には4000ε・10−6の電圧変化率、あるいは、2 mV/Vの出力が得られます。
ただし、ロードセル内部の機械的ひずみは、出力に比較し2割程度大きなひずみを発生させ、温度補償や感度調整で出力を定格値に合わせています。
9.ポアソン比
ポアソン比 = -横ひずみ/縦ひずみとされています。
金属の場合0.33 程度が多く用いられています。